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Research Briefing
10 9月 2026

アジア経済、2027年も底堅さ続く

戦略的設備投資が下支えする底堅さと、対外依存・政策支援縮小に伴う3つの留意点

2026年に異例の力強い成長を見せたアジア主要12カ国の実質GDP成長率は、2027年には0.4ポイント減速して4.2%になると予想されています。世界的なテクノロジー・ハードウェア需要や国内の戦略的投資は高水準で推移し景気を下支えする見込みですが、新たな成長の推進力としては勢いが和らぐ可能性があります。また、政府によるエネルギー補助金や財政支援の縮小、中国の不動産調整の長期化が下押し要因として挙げられています。当社のエコノミストは、資本コストの上昇や政策支援の縮小に直面しながらも、アジアの設備投資サイクルは市場の市場予想(コンセンサス)よりも底堅く推移すると分析する一方、地域の強靭性を評価する際には貿易の国内付加価値の低さ、投資の輸入漏出、そして消費の前提となる家計マインドの脆弱さという「3つの留意点(アスタリスク)」に目を向ける必要があると指摘しています。

本リサーチ・ブリーフィング(原題:The asterisks on Asia’s resilience)では、テクノロジー、電力、防衛、サプライチェーンなどへの巨額な戦略的投資サイクルの行方、中国経済の減速が及ぼす地域的波及効果、ならびに域内各国の財政・金融状況や政治的リスクについて多角的に分析しています。

  • 2027年の成長減速見通しと「底堅さ」の背景:2026年のアジア経済は関税引き上げや原油高を乗り越え、世界的なAI関連需要の急増、サプライチェーンの再編、各国政府による財政支援に支えられて堅調に推移しました。2027年は成長率が4.2%へ緩やかに軟化すると予想されるものの、テクノロジー、電力インフラ、脱炭素、防衛、サプライチェーン強靭化といった「戦略的投資」が地域GDPの約18%(総投資の56%)に達する高水準で推移し、過去の投資サイクルを上回る規模で経済を底支えすると予測されています。
  • 留意点1:強固な域内貿易と国内付加価値の乖離:アジア域内貿易の急速な拡大はサプライチェーンの密度向上を反映しているものの、部材が複数の国境を越えて加工される構造のため、実際の国内付加価値(国内所得や波及効果)は見た目ほど大きくない可能性が指摘されています。中国は依然として川上の主要供給国かつ川下の組立国として垂直統合モデルを維持しており、周辺国の高付加価値領域への進出余地を圧迫しています。さらに、地域の生産が域内消費を上回っているため、アジアは域内貿易の数字が示す以上に域外の最終需要に依存し続けていると分析されています。
  • 留意点2:投資サイクルの輸入漏出と高水準の資本コスト: 戦略的分野への巨額投資は、高い輸入依存度や土地・電力などの物理的ボトルネックを伴うため、国内の雇用や所得を直接押し上げる乗数効果は限定的になりやすいとされています。また、中国の投資成長率が不動産市場の長期調整により地域平均を下回る見込みです。一方で、世界的な金利高局面においても、アジアの自国通貨建て市場の深化と豊富な国内貯蓄プールが急激な資本逃避(突然の資本停止)を防ぐバッファーとして機能し、投資モメンタムは維持されるとみられています。
  • 留意点3:政策支援の剥落と家計消費の上値の重さ: 2026年に実質3.7%程度で推移した消費支出は、政府による燃料補助金や現金給付に大きく支えられていました。インフレ沈静化に伴う実質賃金の改善はあるものの、支援策の段階的撤廃に伴い、雇用や賃金の動向次第で消費マインドが慎重化するリスクがあります。また、中国の民間消費の伸びが4%未満にとどまると見込まれることも、インバウンド観光や消費財輸出を通じて地域全体の消費回復の上値を抑える要因になると試算されています。


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