Industry: 航空・海運・物流・輸送
鉄鋼は製造業、建設、インフラの基幹資材であり、アジアにおける送電網拡張や高度な産業サプライチェーンの発展において重要性を高めています。しかし、アジア各国による中国からの鉄鋼輸入急増は、必ずしも受け入れ国側の産業サイクルの力強さをそのまま示すものではないと分析されています。2022年から2025年にかけた中国からの出荷増の大部分は、受入国の実質的な消費拡大ではなく、中国側の市場シェア拡大(他の供給の代替)に起因していると当社のシフト・シェア分解分析は示しています。インドのみが真の投資需要に裏打ちされた例外とみられる一方、他国では安価な中国製鉄鋼の流入に伴う貿易防衛策の強化や、製品仕様のシフト(半製品や高付加価値品への移行)が進む可能性が指摘されています。
近年、中国からの急速な輸出圧力(中国ショック)がEUの重要政策課題に浮上しており、新たな防衛措置の策定が進められています。現行の暫定的な防衛策では、中国から押し寄せる広範なマクロレベルの輸入急増に対抗しきれておらず、2024年の電気自動車(EV)への関税引き上げ後も、対象外であるハイブリッド車やガソリン車の輸入急増を招くなど、ミクロレベルの対策における限界が露呈していると指摘されています。EU首脳陣は現状の通商不均衡の維持は不可能であるとの認識を強めており、欧州委員会に対して既存のツールを基盤とした実効性のある新たな貿易防衛策の策定を指示したと報じられています。当社のエコノミストは、今後交渉による解決を模索しつつも通商摩擦がエスカレートするシナリオを予測しており、中国側の強力な報復や全面的な貿易戦争へと発展するリスクについて検証しています。