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16 9月 2026

世界的長期金利上昇、FEDフォーワードガイダンス、米国中間選挙

長井 滋人
長井 滋人
在日代表

世界経済を規定する3つのサイクル

過去3ヶ月間における世界的な長期金利上昇の背景2については、中東情勢の泥沼化を背景に市場が中央銀行のタカ派化を織り込んだことが主因であり、タームプレミアムの拡大もその主因は財政リスクの高まりではないとみている。加えて、相次ぐ負の供給ショックによって民間が創出する安全資産の供給量が縮小する一方で政府債務が拡大していることが長期国債金利への持続的な押し上げ圧力となっている。最近のAIハイパースケーラーによる債券発行加速や中国における債券による資金調達への依存度の高まりも上昇圧力となっている。

最近の長期金利の上昇には実質中立金利の上昇も影響3しているかもしれない。金融市場に基づくr*の推計値は、2月以降、米国とユーロ圏の両方で平均25bps上昇している。一方で、マクロ経済データに基づくr*の推計値は殆ど変化が見られない。当社の共通要因モデルによる推計値も僅かに上昇したに過ぎず、現在の米国の実質中立金利は1.2%、ユーロ圏は0%を示している。当社のマクロ経済予測では、AIに関連する生産性の向上を主因に今後5年間でr*は米国でさらに40bps~50bps、ユーロ圏で20bps~30bps上昇するとみている。Bessent米財務長官が債券利回りの引き下げを試みているのは逆風と戦っている可能性がある。

Warsh議長のFEDの情報発信を巡る主張

BOEの政策委員を務めたMichael Saundersが、Warsh議長によるFEDのコミュニケーション戦略に関する批判4について当社の見解を整理している。議長の主張のうちdot plotsの問題点については同意するものの、近年のFRBのガイダンスが「鏡の迷宮」問題―金融市場が単にFRBの発言を反映するだけで、経済情勢の変化に反応できなくなる状態―を引き起こしているとはみていない。実証分析によると、市場は特にインフレに関するデータにおける予想外の動きに対して極めて敏感に反応してきた。金融政策の有効性は政策金利だけでなくイールドカーブの形状やインフレ期待の動向に依存するため、中央銀行は金融市場に対して決して中立的な立場をとることはできない。このためFEDは沈黙に逃げ込むよりも、経済見通しや金融政策に関する見解をより効果的に伝えることに注力すべきであると考えている。

米国経済の見通しとリスク

米国経済の27年成長見通し5については生産性主導の景気拡大の下でディスインフレが進むと予想、コンセンサス対比で強気の見方を維持している。成長の原動力となる個人消費の鍵を握るのは家計の実質(インフレ調整後)資産の動向で、ベースライン予測では今後2年間で資産効果のプラス影響6が薄れていくと想定している。株価の割高感や過去最高水準の実質PERにより、株式市場がここ最近の堅調さを維持することは難しくなり、株式資産の実質的な増加は2027年末までに停滞する見込み。ただ、株価は上下双方向にリスクが大きい。

中間選挙7については、上院の行方は依然として五分五分な一方、インフレ高進が民主党による下院の過半数奪還に有利に働いているが、いずれが過半数を獲得しても僅差に止まる見込み。ベースライン予測では、予算、債務上限、期限切れとなる減税措置といった財政問題について両党が期限内に比較的円滑に対処することを想定。一方、最悪シナリオでは、28年末の減税措置の期限切れを巡って両党が対立、その後の数年間成長の足枷となる。上振れシナリオでは、期限切れとなる減税措置を巡って医療費の増額と引き換えに大規模な妥協案に合意する。また、共和党が議会での過半数を維持すれば、防衛費増額やキャピタルゲイン減税が議題に上り、成長にとって正味のプラスとなるが、インフレや金利に上昇圧力がかかる。

ユーロ圏の成長見通しとリスク

ユーロ圏8についてはエネルギーコストの高騰に耐え抜いた1年を経て、27年には一定の勢いを取り戻すと予想する。原動力となるのは、ドイツの投資と公共支出の大幅な増加、欧州域内輸出を後押しする産業・投資サイクル、個人消費の緩やかな回復という3要因。ただ、EUにおける防衛支出拡大の持続性9については不確実性が残るため、「急速な自給自足推進」と「防衛費増額疲れ」という上振れ・下振れシナリオをモデル化して影響を定量化した。いずれも中期的なGDPに劇的な影響を与えるものではなく、今後3年間の成長率を平均0.1~0.2ポイント上下に振れさせる程度に止まる。しかし、「自給自足」のシナリオでは、債務と借入コストが急増し、欧州の財政課題がさらに深刻化することが懸念される。

AIによる中長期的な生産性への影響

8月前半のハイライトで2060年を展望してAIによる生産性上昇を巡る長期シナリオを当社マクロ経済モデルでどう作成しているかについて紹介し、3つの想定(AI普及率、AI導入の業務への影響度合い、AI導入による生産性の上昇度合い)が鍵を握ることを示した。この枠組みを用いた各国・地域別のAIによる生産性上昇の見通しが英国10、アジア新興国(除く中国)11と相次いで出ており、特に後者では経済構造などを映じてマレーシアが有望な一方、ベトナムやインドが出遅れそうなど国別の特徴が出ていて興味深い。

選出したリサーチ

※リンクがあるレポートは、無料で全文をご覧いただけます。日本語版があるものは日本語ページへ、それ以外は英語版へリンクしています。

  1. Global: Three cycles shaping global growth
  2. Global: Applying Occam’s razor to rising long-term interest rates
  3. Global: A higher neutral rate explains some of the bond sell-off
  4. Global: Is Warsh right? How and why central banks should communicate
  5. US: Next year could be when the economy hits its stride
  6. US: Wealth effects are a major swing factor for the consumer outlook
  7. US: Upside and downside fiscal risks after the 2026 midterms
  8. EZ: Domestic strength to be tested by energy prices
  9. EU: Self-sufficiency or fatigue – scenarios to bookend our defence spending outlook
  10. UK: AI will not solve the UK’s productivity problem on its own
  11. Asia Pacific: Boost from gen AI hinges on faster adoption

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オックスフォード・エコノミクスの世界経済ハイライト

Oxford Economics 在日代表(元日本銀行国際局長)の長井 滋人が日本マーケットに関心度が高いマクロ経済テーマを日本語で解説します。世界経済ハイライトでは、当社が発行したリサーチから関連度が高いレポートを選出しています。原則2週間に1度の更新です。

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