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Research Briefing
16 6月 2026

米国労働市場に過熱の兆候は見られず

一見強固な雇用拡大の裏側と、連邦準備制度(Fed)が利上げを見送る根拠

ここ数ヶ月、米国の雇用者数は加速傾向を見せているものの、労働市場の逼迫が進んでいるわけではないと考えられています。労働市場は依然としてバランスが取れており、名目賃金の伸びも中立的、あるいはわずかにディスインフレ的な傾向を示しているとみられます。これが、連邦準備制度(Fed)が今年の追加利上げ圧力に抵抗すると当社が予測する主な要因です。雇用増のデータのみで市場の健全性を判断することは、純移民の減少ペースやタイミングを巡る不確実性があるため、誤解を招く可能性があると当社のエコノミストは分析しています。より広範な指標を検証すると、現在の労働市場がコアサービスインフレへの深刻な脅威とはなっておらず、タカ派的なFedの姿勢を支持する内容にはなっていないと考えられます。

本リサーチ・ブリーフィング(原題:The labor market is not overheating)では、非農業部門雇用者数や求人データ、離職率といった多角的な労働市場指標を詳細にトラッキングし、生産性の向上や賃金動向が今後のサービスインフレおよび中央銀行の金融政策に与える影響について検証しています。

  • 雇用トレンドの加速と移民データがもたらす不確実性:直近数ヶ月のヘッドライン非農業部門雇用者数は力強い伸びを示しており、過去6ヶ月間のトレンドでも改善が明確に見られます。しかし、失業率を一定に保つために必要とされる雇用の伸び(ブレークイーブン・ペース)との比較においては、慎重な見方が必要であると指摘されています。このベンチマークは、ビザ発給データに基づいた純移民の大幅な減少(労働供給の制約)予測に左右されるため不確実性が高く、移民が労働市場に定着するまでのタイムラグも考慮する必要があるため、雇用の伸びだけを捉えて市場が逼迫していると断定することは避けるべきであると考えられています。
  • 循環的な安定を示す広範な労働市場指標: 総雇用者数に求人数を加えた「労働需要」と「労働供給」を比較すると、現在の米国労働市場はおおむねバランスが取れている状態にあるとみられます。人口変動を平準化した指標を含め、離職率、自己都合離職者の割合、未充足の求人数、および雇用の有効性に関する調査など、多くの労働市場指標は1年前の同時期やバランスが取れていた2019年の平均よりも依然として弱い水準にあると指摘されています。これらの指標は賃金上昇率に対して強い先行関係を持っていますが、現時点で引き締まりの兆候や企業の賃金引き上げスタンスの顕著な上昇は見られず、賃金の伸びはここから横ばいで推移する可能性が高いと考えられています。
  • 生産性の向上がもたらすインフレ耐性の高まり: 現在の経済サイクルにおいて、米国の生産性向上率は年平均2%超を記録しています。さらに、今後AI(人工知能)の導入が広がり深化するにつれて、生産性上昇率は年平均2.5%近くまで加速する見通しです。このような環境下では、賃金上昇率が4.5%近くまで加速したとしても、Fedが掲げる2%のインフレ目標とは矛盾しない可能性があると分析されています。現在3.5%未満にとどまっている賃金の伸びは、この基準を十分に下回っており、現在のトレンドが続けばサービスインフレの減速につながることが示唆されています。
  • 金融政策への影響と現在のインフレ要因: 足元の高水準なインフレは、労働市場ではなく、コア部門に波及しているエネルギー価格の急騰や、AI投資に伴う電子機器のインフレなど、他の要因によって引き起こされているとみられています。米国、イスラエル、イランの間の戦闘終結に向けた合意の行方次第では、数ヶ月以内にこれらの押し上げ圧力が一部反転することも予測されています。サービスインフレの落ち着いた見通しに基づき、Fedは今年の利上げを踏みとどまると予想されます。仮に今後、経済成長がトレンドを上回り続け、労働供給の制約から市場が大幅に引き締まったとしても、生産性の強さを背景に、中央銀行にはインフレが制御不能になる前に政策を調整する十分な時間的余地があると考えられています。


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