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02 11月 2026

米国中間選挙、AI規制、フランス国債金利

長井 滋人
長井 滋人
在日代表

米国中間選挙に関する分析

米国中間選挙の直前予想1では、民主党が下院だけでなく上院も制する可能性が高まっている。いずれの場合もトランプ政権は新たな財政政策を打ち出しにくくなる一方、予算、債務上限、期限切れとなる減税措置等については両党が期限内に比較的円滑に対処するとベースラインでは想定。ただ、第1次トランプ政権のようにWhite Houseが議会民主党との取引に前向きになる場合、民主が両院を制した方が財政拡張リスクが高まる面もある。下院民主と上院共和との3者協議より議会民主だけを相手にする方がより単純で、お互いに都合のよい財政拡張策を受け入れ合って妥協するとインフレと長期金利にかなり上昇圧力が掛かる。

民主党優勢の背景にはインフレと金利上昇がある。当社はインフレ調整後のホリデーシーズンの小売売上高2は金額ベースで4.2%、数量ベースで2.2%の伸びを予測。これは関税の影響で売上が落ち込み、購入が10月に前倒しされた昨年の数量は上回るものの、例年の伸びには及ばない水準。内訳をみても、レジャー関連支出、家具、衣料品中心に株価による資産効果を背景にした高所得層の消費に支えられる「2極化」が顕著となる見込み。

住宅ローン金利の上昇も与党には逆風。当社住宅購入負担指数3によると、所得中央値の世帯の収入は価格中央値の住宅購入に必要な収入の75%未満に止まる。年初来の金利上昇で追加的に500万世帯が住宅に手が届かなくなった計算。住宅着工は鈍化するが、住宅市場は引続き供給不足であることが下支えに。また、買手と売手が様子見姿勢を続ける下で需給の急速な悪化がないため、住宅市場は停滞気味でも住宅価格もさほど下落しない展開を予想。

選挙とAI規制強化リスク

中間選挙で民主党が圧勝した場合、AIに関する政策・規制4が大きく影響を受け、データセンターが電力網のコストをより多く負担し、環境報告を改善することを義務付ける連邦法が成立する可能性が高まる。議会が与野党に分かれた状態では連邦政府による措置は限定的になるが、データセンターをめぐる議論は28年の大統領選挙に向けて激化していく。テキサス、ジョージア、オハイオにおける知事選も影響が大きいが、国家安全保障にも関係するため超党派のロビー活動が活発化し、最終的に規制は限定的となると現時点ではみている。

AIへの依存リスク

世界経済のAIへの高い依存度5は大きなリスク要因。特に米国では26年2Qの成長率に対して輸入の増加分を差し引いたAI投資が米国の0.4ppts寄与、株式市場の資産効果も同程度寄与したと推計される。ただ、主要先進国全体では25年から2026年上半期にかけて記録された年率1.1%の成長へのAIの影響は平均して0.2pptsとより限定的。AI以外の先進国経済の成長鈍化に大きく寄与しているのは2022年以降の金利上昇だが、金利に敏感なセクターがGDPに占める割合が趨勢的に低下して金利上昇への感応度が低下しており、そのおかげで悪化をこの程度に止まっている。また、AIブームは、世界成長にとってネット・プラスではあっても、成長阻害要因ともなっている。一部の先進国では、電力価格や電子機器の価格上昇、借入コストの上昇の影響で成長率が0.2~0.3pptsも押し下げられたとの推計がある。

ただ、当社産業分析チームは、27年の米国企業の設備投資は引続きAI主導となるものの、AI以外の分野への投資6も23年以降最も速いペースで伸びると予測する。世界的な防衛費増加が多くの上流産業を下支えすることに加え、在庫水準の低さや商品価格の上昇といった景気循環要因も投資拡大に寄与する。貸出金利の上昇にもかかわらず、投資リターンは金利コストを上回っており、今回の設備投資サイクルは過去よりも長期にわたって続く見通し。

フランスの政治と長期金利

フランスの財政リスクは抗議活動の激化で悪化を続け、仏国債の対独国債スプレッドは10月予測のベースラインで設定したピーク200bpsを大幅に上回る可能性が高まっており、当社も状況が一段と悪化する可能性を分析、リスク・シナリオ分析も更新7した。ただ、300bpsにまで拡大するシナリオでも、①銀行の国内ソブリン債へのexposureが限定的、②比較的頑健な金融システム、③ソブリンCDSなどをみても現時点で市場全体にシステミックなストレスの兆候が見られないことを踏まえると、本格的な金融危機は回避される可能性が高い。金融の安定が脅かされない限り、ECBによる仏国債購入が行われる可能性も依然として低い。

他のユーロ圏諸国への波及リスクをみるために、現時点で明らかになった各国の政府予算案をベースに27年のユーロ圏の財政緩和幅8を推計するとGDP比0.3pptsと当社ベースライン予想を上回るが、ドイツを除くと財政スタンスはほぼ中立。ただ、ユーロ圏GDPの半分を占める7つの加盟国で選挙が控えており、予算案が未提出或いは信頼性に欠けているほか、多くの予算案がかなり楽観的な成長見通しを前提としていることが懸念材料。フランスとイタリア以外では、フィンランドとスロバキアが国債金利の上昇リスクが高いとみている。

期間プレミアムと債券・株式の相関

世界的な長期金利上昇を主導する期間プレミアム拡大の背景9にはインフレ環境の変化を映じた「債券・株式の相関」のプラス転換がある。米国の「債券・株式の相関」は70年代以降長らく正の領域にあったが、2000年代の大半の期間は負の領域(逆相関)に沈んでいた。相関係数がプラスに戻ったのは23年以降で、その後も上昇傾向が続いている。正の相関は債券投資が株式投資のヘッジ機能を果たしにくくなったことを意味し、投資家は補償として債券により高い期間プレミアムを求める。両者の相関が正に転じた背景にはコロナ禍以降顕著な供給面からのインフレショック頻発とそれを受けた中央銀行のタカ派化がある。こうした変化は今後も続く構造的なもので、期間プレミアムと長期金利を押し上げ続ける。

選出したリサーチ

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  1. US: Higher gas prices boost odds of a Democratic sweep
  2. US: Holiday cheer, at a higher price
  3. US: Higher-for-longer rates will likely slow housing activity until end-2027
  4. US: Data centers are on the ballot
  5. Global: The AI and non-AI economies – two different growth stories
  6. US: The case for business investment to broaden beyond AI
  7. France: Fiscal crisis unlikely to prompt ECB action
  8. EZ: The fiscal stance next year is uncertain amid a packed elections calendar
  9. Global: Why bond yields and term premia are likely to remain high

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