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01 10月 2026

FED利上げ加速、ディーゼル価格高騰、AI投資の持続性

長井 滋人
長井 滋人
在日代表

原油価格想定引上げと中銀タカ派化

当社はフーシ派のサウジ攻撃という中東情勢の新展開を受けて、9月の定例予測実施直後に油価の想定を引上げて見通しを緊急改訂1。新想定ではブレント価格が今後半年は100ドルを上回って推移、27年末には90ドルをわずかに切る水準に下落する。世界成長見通しは27年を2.8%(8月予測3.1%)と下方修正したが、より大きな変化は米欧中銀の政策見通し。FEDとECBは様子見を続ける余裕がなくなり、9月に続いて年内に追加利上げを余儀なくされる展開を織り込んだ。ただ、27年中は据え置きが続くと先物市場より慎重な見方は維持しており、PCEの作成方法改定2でコア・インフレの伸びが下方修正されたことはこうした見方を裏付けた。BOE3も11月と来年2月の2回の利上げを追加したが、日銀は為替市場と米国の圧力で既に12月と来年4月の利上げを織り込み済みであったため見通しは変えず。

ディーゼル価格上昇が際立つ

原油相場上昇より心配なのが、ここ1か月の間のディーゼルやジェット燃料などの精製石油製品の価格急騰4で、世界のsupply chainにとって重大な懸念材料となっている。特に米国では歴史的低水準の在庫や中西部にある製油所の操業停止が供給混乱を一段と深刻化させ、当社作成の米国におけるsupply chainのストレス・トラッカー5は既に秋に向けてかなり上昇していて心配だ。エルニーニョ現象による干ばつの悪化がパナマ運河(通過する貨物の約70%は米国発または米国行き)を通る船舶の通行を妨げることも事態を悪化させる。

ディーゼル価格は米国の最大のインフレ・リスク6になっており、FED利上げ加速を織り込む今回の判断を大きく後押し。精製石油製品の供給逼迫で来年のコアインフレ率が最大0.4ppts上昇すると予測するが、リスクは上振れ方向。トランプ大統領が示唆する3か月間のディーゼルの輸出禁止措置7が仮に実施されると問題を一段と複雑にする。米国のディーゼル価格は数週間以内に約30%下がる見込みだが、その恩恵は全国で均等に及ぶわけではない。また、精製業者が既に上限に達している稼働率を引き下げざるを得なくなり、ガソリンやジェット燃料の価格が上昇するリスクもある。最大の被害者は海外で、欧州のディーゼル燃料の卸売価格は40~50%上昇する可能性があり、ラテンアメリカやカリブ海地域への影響も甚大。

米欧における長期金利上昇を巡る分析

世界的な長期金利上昇は中央銀行のタカ派化を市場が織り込んだことが主因だが、FEDの利上げが予想どおり加速した場合でも長期金利が低下に転じる可能性は低い8。米国における過去40年間の6つの利上げサイクルをみると、2サイクルでは利回りが持続的に低下したが、4サイクルで最初の利上げ後に10年物国債利回りは上昇した。金融政策と長期金利の関係に関する伝統的なモデルをWarsh議長の下でのFEDの状況に即したものに拡張してモンテカルロ・シミュレーションを行っても、利上げの初期段階では主に短期的な政策金利予想に牽引されて利回りがほぼ常に上昇するが、その後利回りが低下に向かっても利上げ時点の水準を下回るのは稀で、価格や賃金がインフレショックに速やかに反応するケースに限られる。

ユーロ圏各国の長期国債利回りはソブリン債務危機以来の最高水準まで上昇しているが、対独国債スプレッドは依然として抑制されている。インフレ懸念と中銀タカ派を映じた長期金利上昇であっても、それが政府利払い費用の上昇で金利上昇と財政収支悪化の悪いスパイラル9に陥る展開が懸念されるが、リスクシナリオ分析を行っても殆どの国でその可能性は小さい。ただ、国によって頑健性は異なり、ドイツ国債利回りが50bps上振れするシナリオ分析(各国スプレッドは不変)では、財政赤字が深刻なフランスの政府債務GDP比率はショック直後から急速に上昇し始め、2040年代半ばにはイタリアの水準を上回る。

AI投資頼みの世界経済の脆弱性

世界経済のAI投資ブームへの依存度は一段と高まり、消費や投資の上振れを通じた今年の世界GDP成長率2.5%への押上げ寄与は0.3pptsに上る。一方、AI投資ブームの持続性10を巡る懸念は高く、下振れした場合の世界経済へのダメージは甚大だ。ブーム持続性の鍵はAI関連企業が市場の期待する高いリターンを実現出来るかに掛かっているが、そのためにはリターンの源泉となるAIによるマクロ経済全体の生産性上昇が不可欠。ドットコム・バブル時は生産性上昇が比較的早期に観察されたが、それでも投資ブームは唐突に痛みを伴うかたちで終焉を迎えた。一方、今次局面ではAIによる生産性上昇は遅れ気味で未だ確認出来ない。また、当社の比較的楽観的な生産性上昇予測が実現したとしても、ハイパースケーラー各社が見込む高いリターンを実現するには、AIが追加的にもたらすGDPの上振れの殆どをごく少数のハイパースケーラーが獲得するという非現実的な世界を想定しなければならない。

AIによる中長期的な生産性への影響

EU全体の生産性は低調であったパンデミック前のトレンドを約2%下回り、その差が埋まるのは2029年になる見込みで、既にパンデミック前のトレンドを約5%上回る米国とは対照的。当社は2023年以降の年間生産性上昇率0.5%のうち約5分の1がAIによる寄与と推計するが、EUにおけるAIの生産性上昇への寄与11が控えめなのは効果が情報通信(ICT)分野に限られているため。ただ、短期的には製造業およびICT部門が牽引するが、AIの導入拡大に連れてAIに関連する生産性の向上が専門サービス業を筆頭に他の部門にも徐々に波及していく。EUの2026-29年の年間生産性伸び率は平均1%程度まで加速すると見込む。

ラテンアメリカ諸国12では、AIは2040年にかけて潜在成長率を0.1~0.3ポイント押し上げる可能性があるが、人口減少や生産性伸びの鈍化による影響を相殺するには不十分。非正規雇用の割合の高さ、比較的低いAIの導入率、AIによる生産性向上の恩恵を受ける職業の割合の低さ、イノベーション能力の限界、経済統合の遅れ、労働市場の硬直性が制約となる。

選出したリサーチ

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  1. Global: Escalating oil supply disruption pushes central banks to a fork in the road
  2. US: Revisions leave a stronger-looking economy
  3. UK: High oil and gas prices likely to tip the balance towards rate hikes
  4. Global: Record refined product prices are a key supply-chain bottleneck
  5. US: Supply chains vulnerable to fragile chokepoints and higher fuel costs
  6. US: Diesel emerges as the biggest inflation risk, and an export ban won’t resolve it
  7. Global: This week in economics – Is the medicine worse than the cold?
  8. Global: A hawkish Federal Reserve won’t deliver bullish hikes
  9. EZ: Rising yields imply fiscal trade-offs
  10. Global: Is an AI downturn unavoidable?
  11. EZ: AI appears to be driving a mild productivity upturn
  12. Latin America: AI is a level shift, not a game changer

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